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10.10

『よみがえる声』

在日朝鮮人2世である映画作家・朴壽南が約40年前から撮りためた10万フィートもの16ミリフィルムを、娘の朴麻衣が復元作業にとりかかり、完成した映画が、朴壽南・朴麻衣共同監督『よみがえる声』。だいぶ出遅れたけど私が見ないのはさすがにまずいでしょと初めて訪問するシネマハウス大塚さんで鑑賞。
その事件の名も大島渚監督『絞死刑』(68年)も知ったり見たりしてたつもりだけど、まさか小松川事件の犯人の朝鮮人青年と向き合った女性がいたんて、そしてこんなドラマが起こっていたなんてと、朴壽南の記者時代の仕事に息が止まるような衝撃を受けたのはまだ序の口で、広島で被爆した朝鮮人、徴用工で強制労働させられた朝鮮人、軍艦島で地獄を見た朝鮮人、関東大震災で生き延びた朝鮮人。そして在日3世として学校でいじめられた麻衣さんの記憶。今まで情報としてしか知らなかった人たちの当時のインタビュー映像とそこにあるまる出しの歴史には本当に息ができなかった。しんどい内容だけどマジよみがえってくれてありがとうと思ったし、在日同胞たちの声を記録するために旅を続ける監督のパワーにも圧倒されっぱなし。特に軍艦島での圧巻のインタビューを見ると、日本人ってどこまで最低になれるんだと呆れるし、その最低は現在進行形で、日本人じゃなくてよかったとすら思ってしまいそうになる。
映画は過去の映像だけでなく、共同監督中の母と娘が若干強めに揉めながら映画を作っていく様子も映されていて、在日おばあの強さを知ってる私はおふたりの様子にちょっと笑ってしまった(でもパンフレットでもご本人が語ってらっしゃるけど、これらの映画は監督が女性だから作ることが可能だったと思う)。
監督がペンからカメラに持ち替えて映画製作を始めたのは沈黙を映すためだと言う。その沈黙を日本人は(もちろんそれ以外も)一度はこの映画を見た方がいい。