妄執、異形
絶頂の幸せを抱えたまま朝方やっと眠りについたのに、正午頃には鼓笛隊の音に起こされる。そう言えば我が家の目の前は小学校だったのだ。運動会シーズンをナメてた。
明らかにまだ体にお酒残ってるけどまあせっかく目覚めたし、ってことで、我ながらいかがなもんかと思う程足を運べていないシネマヴェーラに向かう。
1本目に森一生監督の『怪談 蚊喰鳥』(61年)。怪談っつーからにはもちろん幽霊が出てきて怖いねんけど、なんでか、なんでもないシーンの最後余計な5秒にゾッとする、の連続で、不思議な映画だった…(そんな風に感じたのは私だけかも知れんけど)。盲目の按摩師(&幽霊)役の船越英二が、こういう人が実在して、その人自身が映画に出てるとしか思えないような喋り方と演技で混乱する。マジ怖いよ。中田康子は色っぽいあやや風で大変可愛かった。
映画の展開が後半から『怪談お岩の亡霊』とほぼ同じになっていくのにはちょっと笑ったけど、相変わらずヒドい話で、森監督はつくづく人非人派なんだなと思った次第。
2本目に増村保造監督の『盲獣』(69年)。そう、今日は船越英二盲目2本立てデーなのでした。
冒頭の出演者のクレジットに3人しか名前が出てこない時点でただならぬものを感じたのだが、映画は、想像を遥かに超えてただならなかった。すごかった。役者3人(緑魔子・千石規子)の芝居もすごけりゃ変なセットもすごいし、84分という短い時間に映画の中で起こることの何もかももすごい。増村監督の作品を決していっぱい見てるわけじゃないけど、でもなんか異質な感じがしたな。
ゴム製の巨大な女体のオブジェを遊具のように男と女が追いかけごっこしてる前衛的な図の後に、コッテコテの嫁姑問題勃発と思いきや(笑っていいのよね?あの辺)、究極のSM映画へと転身…。真っ暗な中、動く力もない程衰弱した盲目の男女にだけライトが当たり、その2人がひたすらSMするシーンはただ圧巻。そしてラストは…。ああ……。
これは10月から文芸坐で始まる増村特集にまた通ってしまいそうな予感。が!ラピュタ阿佐ヶ谷の瀬川昌治特集とかぶってる!!ひょえー。