『麦の穂をゆらす風』
心の底から勤労に感謝しながら、夕方ふらっと渋谷に出て『麦の穂をゆらす風』を見る。06年カンヌパルムドール受賞作品。
ケン・ローチ監督の作品、あんまり見てないんだけど(こんなんばっかりやな)数年前に1人で『SWEET SIXTEEN』を見に行って、ラストのあまりのブルーさにかなり落ちた記憶があるのでちょっと怖かったのだが。
1920年代イギリスのひどい弾圧からの独立運動をめぐるアイルランドの若者達の物語、だけど、相変わらず世界史にとんと疎いgojoさん&残虐な描写の戦争映画なんて結構見慣れてるはずのgojoさんなのに、映画が始まって5分くらいから涙流しっ放し。ほんと、涙腺おかしくなったのかと自分でも疑ってしまうくらい泣いた。
ストーリーに何か劇的な感動エピソードがあるわけでもなく(それでも完璧なお話の進み方だけど)、特別に感情移入出来るキャラクターがいるわけでもないのにここまで泣いてしまったその理由は、多分この映画を英国人(映画の中では救い難く最低な存在)監督が撮っていて、そこにタイムリーに今私の心に引っかかってる「感情の持続力」の存在を思いっきり感じて、その力のパワーの強さと激しさと重要性にやられたんだと思われる。鶴見俊輔氏も仰ってたが、やっぱり日本人にこの力はないよな。日本人がこんな風に朝鮮や中国のことを撮る日が近いとは到底思えないし。
いやー、それにしても泣いた。人に映画を勧めるのってあまり好きじゃないのに最近勧めずにはいられない作品が多くて困ってるんですが、この映画も、「イギリス映画とか歴史ものとか苦手~」とカマトトぶってる場合ではなく、色んな人に見て欲しいなあ。祭日だからか今日は結構混んでたけど、もっと行くべし。126分とちょい長めやけど、気にするな。
上映終了後、劇場が明るくなってお客さんはみんな帰って行くのに、「呆然」としか言いようのない表情で座席に座り続けていた外国人男性2人組(なんとなくアメリカ人には見えなかった)の姿が印象に残る。
あの業田良家の名作『自虐の詩』が映画化って。しかも堤幸彦監督って。これ以上ない程の漫画への冒涜じゃね?そこに想像力のある人間は1人もいなかったのかよ。