街の犬
いい加減溜まったポイントを消費すべく、ユーロスペースさんでアキ・カウリスマキ(森崎東監督風だとカルーセル真紀)監督の『街のあかり』を見に行く。暑い。
フィンランドのなーんにもなさそうな小さな町で、地味に孤独に警備員として働いている、でも酔っ払うと野望とかを語ってしまう哀しい男がある日突然女に惚れて騙されて傷ついて救われて…。完璧に面白いだろうことは見る前からわかってたけど、実際見てみてやっぱり完璧に面白かった。言うことナス。男の顔と手だけで十分泣けるのに、あの黒人少年と犬はずるい。美し過ぎます。
個人的には前作『過去のない男』の方が衝撃的な面白さだったと思わなくもないけれど、これはこれでじゅーーぶんに素晴らしい78分でありました。こんな映画をタダで見れるなんて有り難い話です。
ということで、誰かヘルシンキ行きません?ちょっとマジで。この際エコノミーでも我慢しますし。
続いて、ほんとは某映画のレイトショーを見るつもりだったのだが劇場に行くと今日は某新作映画の完成披露試写のため休映とか言われくさって、仕方なく近場で同じような時間にやってる映画、という消極的な理由で根岸吉太郎監督の『サイドカーに犬』を見たら、これが想像以上の面白さで、ラストにはまんまと泣かされる始末だったのだワン。
現在30歳の女性が、10歳の頃母が家出した直後突然家にやってきた父の愛人ヨーコさんとの数日間の生活を回想する物語。見ながら、とにかくまあ色んな事が上手いなあと感心し切り。アパートの一室でロクでなしの男たちが麻雀する横で卓上ゲームをする弟の横でそれから目を逸らすように二段ベッドで勉強する主人公の向かいで黙って煙草を吸う愛人、という異様な状況をさらっと映してしまう強引さには思わず笑ってしまった。主人公とヨーコさんが自転車で草原を走るシーンの美しさも印象的。二人が仲良くなっていく過程を見てて、「そうそう、実母より愛人の方が一緒にいてて楽しかったりするもんよね」と共感も出来たり。
ヨーコさんのちょっとぶっ飛んでる女のキャラクターも、ギリギリ嫌みじゃない程度の趣味の良さでよかった。が、演じている竹内結子、芝居の良し悪し以前にどんなに頭を働かせても「変」という感想しか出てこない髪型が気になって仕方なかったのが悔やまれる。いや、でもやっぱり色んな意味でスケールがTV的過ぎてスクリーンに映っても全然ときめけなかった。これが別の女優だと(小池栄子や池脇千鶴なんてどうでしょう)もっとおかしな意味で面白い映画になったんじゃないだろうかと思わずにはいられない。
子役の松本花奈、そんな微妙な表情どこで覚えてんこのませガキがと突っ込みたくなる程確かに上手かった。上手過ぎたのが欠点。古田新太のダメ男っぷりが笑えて泣けた。男ってアホやねえ。
ってかさー、西原理恵子『毎日かあさん 出戻り編』やばいね。鴨志田さんが亡くなる直前のエピソードの書き下ろし、渋谷の蕎麦屋で独り酒しながら読んでたら、鼻水垂れる程本気泣きしてしまった。この場合の好きってずっとあるのかな。