『プライド』
もちろん見る前から危険な映画だということは重々承知していたのですが、やっぱり幼少の頃「有閑倶楽部」を読んで自分の出自が財閥でないことを本気で呪った身としては一条ゆかり先生漫画家デビュー40周年記念作品を見逃すわけにはいかぬと金子修介監督『プライド』を見たのですよ(この原作漫画は途中までしか読んでないけど…)。シネコンでも上映してるらしいがなんとなくシアターNさんで。客は5人程。
亡き母の血を継ぐお金持ちのお嬢様と家庭環境にも恵まれない貧乏な女がお互いオペラ歌手という夢を目指して火花を飛ばす、と、一見古典漫画「ガラスの仮面」構造のようでそこはやっぱり一条先生、映画開始10分であっさり金持ち女の親は倒産しあっというまに無一文、貧乏女はただのひがみだけを理由にとことん性悪、オペラが夢のはずなのにふたりが初めて歌で闘うのはなんでか銀座の高級クラブ、と、映画と言うよりちょっと豪華な昼ドラを見てる感覚。役者の芝居もやたらオーバーアクション。 これが意外と、いや私が20年来の昼ドラ好きだからか(「ラストダンス」はやっぱり名作だと思う)、あまりのバカらしさにげらげら笑いながらも126分(長いよ)退屈はしなかったという点で結構満足出来たり。
主演の満島ひかり(新種の妖怪かと思う程髪の毛の量が多くて勝手に親近感を抱いたてしまった)が、立派にこの映画に馴染む芝居をやり遂げててなんか感心した。やったら歌上手いなと思ったら元folder5の子だったのですね。ミッチーもほんと漫画から出てきたみたいなキャラクターっぷりだったり、「あれ、この人クラブのママ以外に演じてたことあったっけ?」と思ってしまう程高島礼子もハマり役。キムラ緑子はここでも素敵で、役者は中々。
問題は、お嬢様役のステファニーくん。レコード大賞新人賞を受賞してるシンガーさんらしいが、初めて見ました。私は常々「ハーフ顔は色気がないから好きじゃない」と言っているのですが、彼女の場合それを通り越してちょいちょい男に見え出して困った(ココリコ田中の女装姿に激似)。オペラ歌手という設定には丁度いいガタイの立派さだとは思うのですが(お尻と足の形はマジ素晴らしかったが)画面の中でひとり浮きまくってる感がかなりスリリング。女の闘いよりもステファニーの姿にスリルを感じる、ってのがもし監督の意図なら、弟子入りします。
と、どうも憎めない映画だったですが、それでも、劇中出てくるロケ場所が私の出身大学だったりウチから徒歩一分の質屋だったりして、なんか自分のレベルがこの映画程度と思い知らされた感じがして、それはそれでちょっとショックだったり…。
夜、親切な御方に頂いた08年末の「すべらない話」をやっと鑑賞。個人的にはほっしゃんとケンコバが最高だった。