『ブルーノ』
低気圧と生理痛と呑み過ぎでへろへろの体を引き摺ってわざわざ強風の休日の新宿まで出てきたのにお目当ての映画が満席だと知った瞬間には本気でシネコン放火してやろうかと思ったけれど代わりに急遽見たラリー・チャールズ監督『ブルーノ』が最高に面白かったので全部許す。
サシャ・バロン・コーエン(MTV授賞式でエミネムにお尻乗せてた人)演じるオーストリア出身のゲイ、ブルーノくんがセレブになることを夢見てミラノやロスや中東で大暴れ。全篇えげつない下ネタ&差別ネタで彩られた素晴らしい80分。ゲイ団体からは「誤解を招く」と反発を買ってるらしいが、そいうことじゃない、と思う。
ネタのひとつひとつが本気で笑える上、解説を読む限り本当にやばいことをやってるそのほとんどがドキュメンタリーとも言える程危険な撮影をしているとのことで、すごいの一言につきる。例えば、パリス・ヒルトン目指してセックスビデオを撮るために本物の政治家との密室でのやりとりを隠しカメラを仕込んで撮影したりテロリストの人質になって有名になるためにビン・ラディンの手下に誘拐してくれと頼みに行ったり。こういうコメディに対しては映画としてどうこうよりとりあえず面白ければそれで良し派(英語の訛りが理解できればもっと笑えたんだろうけど)。個人的に大好きだったのは黒人の養子をiPodと交換ネタと、両手にバイブを持ったゲイに襲われた時の護身術の意味なさ過ぎさ。思い出しただけでも笑える。それでもラスト、マッチョな奴らが客席から「ホモは死ね!」と罵声を浴びせる中ステージ上で絡むシーンと、詳しくは書かないけれど最後のレコーディングシーンには軽く感動させられたりもしたり。前作『ボラット』を見逃してることが本気で悔やまれる。みんなも『ブルーノ』見てね。
そしてやっぱり連休の中日の夜にこんな映画を見に来るお客さんはみんないい人で、おひとり様率が高いのに劇場は大爆笑の渦。ええこっちゃ。