『第9地区』
ヒト型で言葉を話すコミュニケーション可能なエイリアンが登場し、更には主人公がエイリアンに変身して人間たちと闘ったりするので当然『アバター』を思い出すのですが、『アバター』が変身後を重点的に描いたのに対して、変身までの過程をあれやこれやと引き延ばすニール・ブロムカンプ監督『第9地区』をシネマ・ロサにて鑑賞。その「あれやこれや」は退屈ではなかったんですけど、ただ、退屈しなさすぎて飽きてしまいました。アメリカではなく南アフリカの上空に宇宙船が何十年も浮きっ放しで宇宙人の存在が日常化しているという設定は面白かったけど、ほんとそれだけの映画だったような。
監督にとっては気を利かせたつもりのグロいシーンやブラック・ユーモアが過剰に詰め込まれ過ぎで、気がつくと重要な展開がどんどん後回しになっていくのはどうなんでしょうか。で、ようやく訪れた、バカで自己中で卑劣だった主人公がエイリアンを助ける動機が「なんとなくそういう気分になった」的なのもどうなんでしょうか。もしグロい描写を売りにしつつ軍人たちの下品な振る舞いを本気で馬鹿にしたいのだったら、エイリアンを徹底的に謎の生物として描いて『スターシップ・トゥルーパーズ』張りにやってほしかったです。もし人間とエイリアンの交流を本気で描きたいのだったら、やっぱり『アバター』張りにやらないと駄目なんじゃないでしょうか。そのどちらにもなれない中途半端さゆえか、社会派気取りの退屈恐怖症監督に都合がいいというだけの理由で、イラクを南アフリカに、イラク国民をエイリアンに、単純に置き換えただけのようにしか思えないのでした(インタビュー映像とニュース映像の使用も、同じ理由により却下)。残念。あ、でもエイリアンのビジュアルが『ブレインデッド』を思い出させたのはちょっと嬉しかった。
そりゃ一理はあると思うけどさあ。さすがエイリアンの母。最近の夢は友近のシガニー・ウィーバーの物真似を体得することです。