2.10
『哀しき獣』
世間では大好評だったらしい監督のデビュー作『チェイサー』にはまったく乗れなかった私、今回もどうなんだろうと半信半疑でナ・ホンジン監督『哀しき獣』 を見てみたら、そこまで悪くないじゃないのと思ってしまったのは、頭で考えて作りました感がダダ漏れだった前作に比べ、とにかく隙あらば全力疾走する男たち、ぶつかり合う車たち、ばんばん割れるガラスたち、ぶすぶす刺さる包丁たち(がんがん人が死んでいくけどほとんど拳銃は出てこない)の全てにたいした意味がなくて、終盤には主人公だったはずの男まで出番を脇役に乗っ取られる始末で、こいつらなんのためにこんな派手なことやってんねんとちょっと笑えたからかもしれない。酔いそうな手持ちカメラとガチャガチャした編集に根本的に賛成できないという問題は置いといて(もちろんもっとうまく撮ってれば傑作になっただろうにと思わずにはいられない)。お話の鍵となる中国に生きる朝鮮族のことは、恥ずかしながらほとんど知識がなく反省したんだけど、 その朝鮮族の一番のワルの重要アイテムが斧ってのがまた笑えて。斧がなければ牛の骨で殴り殺す朝鮮人、ひどいやっちゃ。
最終章で、悪い癖なのかまた無理矢理にでも話しを上手にまとめてしまったのがつまらない。そして『チェイサー』のときもびっくりしたけど、見てて「韓国さん大丈夫なの?」と不安になるくらい警察が馬鹿過ぎるのは一体何なんだろう。でもこんな派手なカーアクションを街中で撮らせてくれる韓国はいいところ。主演俳優、あら西村晋也監督韓流デビューと思ったら、ハ・ジョンウだった。役者はみんな良かった。