『リアル〜完全なる首長竜の日〜』
それはそれは親切な御方のご招待により、6月1日(土曜)より公開予定の黒沢清監督最新作『リアル〜完全なる首長竜の日〜』 を一足お先に試写で拝見させて頂きました。
原作小説は未読だけれど人気らしく、謎の自殺未遂により昏睡状態になった恋人の意識の中に「センシング」という医療技術で潜入し、彼女の頭の中の仮想現実に行くことでその謎を解いていく佐藤健&綾瀬はるか主演の超メジャー映画、のはずが、もちろん、見てる途中から堪らず「マジすげー!」と叫びたくなる程凄まじく面白い映画だったのに、いつもにも増して全然うまく感想が言えない。なぜなら本当にこんな映画他に見たことがないから。ミステリーの様なホラーの様なあやつり糸の様なジュラシックパークの様な壮大な愛と正義の物語が、めちゃくちゃ美しい映像と呆気にとられる勢いで展開していくもんだから。どこにでもあるようなしょぼい赤い旗がこの世で一番不吉なものに見えるんだからほんとーに不思議。ストーリーの謎より何がどうなったらこんな映画を作れるのか、監督の頭の中の方がミステリー。
二時間以上の本編の中で本当にほとんど笑顔を見せない主演のふたり(しかしこのふたりのダイアグラム的類似性はやっぱり意識されてるのかしら)、登場した瞬間から美し過ぎて明らかにタダ者じゃない感出まくりの中谷美紀、フィロソフィカルゾンビ、役者もみんなよかったし、芦澤明子氏のカメラも素晴らしかった。個人的には黒沢監督の作品の中で一番好きかも。必見。
とか大興奮しときながら、実はこの作品はあと2、3回見ないと冷静に受け止められない。なぜならはるか演じるヒロインの名前が「あつみ」で、冒頭から、想像以上のあつみコール、成瀬巳喜男『生さぬ仲』以来の事態に。健が「あつみ!」と呼ぶ度「はい!」と応えたくなる気持ちを抑えての鑑賞(って言うか、ちょっとでも私のことを知ってる人にはいい迷惑でしょうねこのあつみっぷりは…)になってしまったのだった。多分一生分はイケメンに名字呼ばれた。