10.03
『楽園からの旅人』
なんとか上映終了ギリギリに間に合った、エルマンノ・オルミ監督『楽園からの旅人』。お久しぶりの岩波ホール。
冒頭から、教会の扉がばーんと開いたらどーんと重機が待ち構えてるという中々ショッキングな始まり、どうやら明日には取り壊されるらしいイタリアのどこかの教会で、長年そこを守ってきた老司祭が最後の夜を哀しみに打ちひしがれながら過ごしているところに楽園からの旅人が現れ、あっというまに段ボール村が(原題は『段ボール村』だそうな)。映画自体は87分間この教会の中でしか展開しないが、外から聞こえるヘリコプターやサイレンの音にはじまり、アフリカからの難民、子どもの誕生、キリスト教の歴史とどんどん壮大になっていき、まさかこの崇高な話のすべてを理解できたとは到底思えないけど、さすがにそれでも面白かった。映画自体が段ボール村のような。
内容の深い部分のあれこれはとりあえず置いといて、実際の移民が多数らしい登場するアフリカ系黒人たちの顔や佇まいが素晴らしく、そしてそれを丁寧に捉えるオルミジュニアのカメラも凄まじく、会話らしい会話がほとんどなくても彼らのアイコンタクトだけで十分進んでいくサスペンスに、82歳のおじいちゃん監督、是非次回作も見てみたいなあと。電子音みたいな妙に浮いてる音楽もなんか不思議でよかった。