『許されざる者』
なんだか真面目な映画が続いたなと、無事抜糸したあと李相日監督『許されざる者』を見てみた。最初この映画の噂を聞いたときには「もっとも許されないのはお前らじゃ!」と製作者たちの正気を疑ったものだが、幸か不幸かオリジナル版を最後に見たのはもう数年前で、そこまで詳細に思い出せるわけでもなく、なんとなく普通の映画として見てしまった。
舞台は明治初期の北海道、アイヌの話なんかも絡めつつ、こんな場所が日本にあったのかと驚くような荒野と、ろくに歩くこともできないような超雪原、立派なセット、 なんか色々頑張ってはるなあと感心する部分がなくもなかったけど、やっぱり主演の渡辺謙がもの凄い過去を背負ってる男には中々見えず、ちょっとイケメンのおじさんがなんか苦悩してる程度にしか感じられなく、残念。さすがにイーストウッドと比べるのは酷だとしても、やっぱり比べてしまう。
それと、ついこないだ『ウルヴァリン』なんて優れたアクション映画を見たばかりだからか、せっかく銃と刀を使ったクライマックスがショボ過ぎ。男1対30くらいの斬り合いなのに、映ってるのがほとんど渡辺謙の顔ってのはいかがなものか。あと、さすがにこの音楽は酷い(燃え上がる炎をバックにケンワタナベが立ち去るところで流れる超大袈裟な音楽にはつい笑ってしまった)。 内容的には、冒頭での女郎たちの怒りが急速に覚め過ぎじゃないかと感じたのですが。しかしこの監督、『悪人』のときもそうだったけど、映画の中で時間を割くポイントが微妙に間違ってると思う。
以前の姿が思い出せないくらいワイルドになってた柳楽優弥が悪くなく。あの歳で身体を曝して涙を流す柄本明にはさすがにちょっとぐっときた。生傷の描写がやたら生々しいのは一応こだわりなのかしら。
でもまあ、イーストウッドのリメイクなんてするもんじゃないと改めてしみじみ思った。