10.17
『凶悪』
実際の事件のことは全然知らないんだけど、白石和彌監督『凶悪』 は、それでも楽しめた。
死刑囚の告白で明るみに出たまだ誰にも気付かれていない殺人事件、個人的な怨恨とか快楽とかのためでなく、ただ純粋にお金のために残酷に殺された年寄りたち、その告白を記事にするため事件を調べているうちにどっぷりのめり込んでいく雑誌記者…、という中々えげつない内容をあっさりとグロテスクに丁寧に撮られた映画という印象。まあこのキャスティングの時点でだいぶ勝ってるとは思うけど(でもピエール瀧の役は中原昌也でも面白くなっただろうな)。主演三人の俳優陣のせいでまさに人が殺される瞬間のめっちゃ怖いシーンでも思わず笑ってしまったり。
ただ、128分がちょっと長いなと思ってしまって、原作があるから仕方ないだろうけど、もうちょっとお話のポイントを絞ってもよかったんじゃないかしら。記者と死刑囚と首謀者の「先生」の関係と記者の私生活と老人問題と法廷劇と死刑制度とキリスト教の、どれもが中途半端な気がしなくもない。結局瀧がなんで突然先生を攻撃しようと考えだしたのか、最後までイマイチよくわからなかったし。
しかしあの長回されたクリスマスパーティーのシーン、ああほんとに狂った世界やなあと震えつつも、なんとなく既視感がある自分もいやだった。幼少の頃の大人のイメージ(あくまで)に似ている。