8.30
『つかのまの愛人』
ギョッとするほど面白かった、フィリップ・ガレル監督『つかのまの愛人』。
失恋した娘とその父親とその愛人の、ほんとにどうってことない76分のドラマ。ところどころ本気で笑ってしまうような(飛び降りようとするシーンとか、愛人の情事を目撃するシーンとか)、ふざけてんのかって突っ込みたくなるところがあるのに、一秒たりとも気が抜けない濃厚さ。若い愛人に裏切られた(と思い込んでる)おっさんがとぼとぼひとりで夜道を歩いてるだけの姿が凄まじく、一瞬「フランス人は何をやってもかっこいいのか!」と思ったけど、監督とカメラマンの力でしたね、きっと。女の顔のどアップだけで震えるほど凄いんだもの。
監督である父親が実の娘をこんな映画に使うというクレイジーさは精神分析的に専門の方がやってくれるだろうから置いといても、この若い愛人の一見不可解な行動や、娘と愛人の関係性を簡単にカテゴライズさせない、女性のある種の欲望というものをわかってないようでわかってらっしゃるおじいちゃんだなと感動しました。
それにしてもエステール・ガレルちゃん、お兄ちゃんにほんとーにそっくりね。顔だけ合成したみたい。