『レッド・ロケット』
最近出遅れがちですが、ようやくショーン・ベイカー監督『レッド・ロケット』見た。
わかる、わかるよ、ロスに出ても結局テキサスの貧困地域に戻るしかない主人公、ポルノ俳優という過去からまともな仕事につけず、結局ハッパを売って若い女とセックスする日常に戻ってしまう、そうしかない人生。そんな環境の中では真っ当な人間でいることすら難しい。彼を構成するあらゆる要素が彼をとことんクズにしてしまう、それはわかるんだけどね、さすがに主人公マイキーの男特有の底なしのクズさに見ながらイライラしまくったのは私が本当に心底能天気なバカ男が嫌いだという個人的理由も大きいとは思うが、この映画の中でどんな形であれ家族や家を守るのは女に限られ、男はとことん役立たずな存在だということからも監督は意識的に男のクズさを描いているんだろうし、その視線(距離感)はどこまでもクール、最後まで彼を否定も肯定もしない「クズはクズである」という千鳥映画(「ユリイカ1月臨時増刊号ジャン=リュック・ゴダール」参照)なことを考えると、「クズはクズだなあ」としか感じようがく。だからこの映画自体はすごく良いんだけど、それとは別に、ネット上でのみなさんの感想を読むになんで主人公に同情的視線が向けられるのか、私には理解不能。みなさん優しいね。クズに優しくしたっていいことなんてないのに。
ボロボロの自転車やラストベルトな工業地帯、デッドなはずのものたちがあんなに美しく、ドーナツ屋さんはどこまでもポップで、でも家の中とかめちゃ現実味のあるゴチャつき具合、そういう演出も素晴らしかった。
元カレの家族とか不憫過ぎるお隣さん(でもこいつもバカだから同情はしない)とかもよかったけど、一番痺れたのはあのおばあちゃん(義母)。あんな老人があんなにかっこよくジーンズ履きこなす姿初めて見た。超憧れる。