見終わってまず「映画界のおじいは元気なうえに過激過ぎるやろ！」と叫ばずにはいられなかった、アレクサンドル・ソクーロフ監督『独裁者たちのとき』。
AIやフェイク動画は一切使わず、アーカイブ映像のみでヒトラー、スターリン、チャーチル、ムッソリーニたちの姿をスクリーンに蘇らせ、そこで交わされるセリフのすべて実際の発言や手記を引用している…。スターリンとチャーチルが「お前は臭い」「お前も臭い」と悪態をつきあったり、ヒトラーが冬彦さんみたいなキモい表情で「ワーグナーの姪と結婚したかった」とうじうじしてるのだが、それがどういうことなのか理解するのに数分ほどかかった。理解してからはやってることのクレイジーさに慄いた。これはやばい。ぶっ飛び過ぎてる。
4人がいる場所や時間の見たことのない気持ち悪い感触、巨大な民衆のうねりから響く音、成り立ってるようで成り立ってない会話、やたら増殖する独裁者たち、見てる間中ずっとぞわざわ気持ち悪い。幽霊なのに現実の記録ってのが混乱する。
78分の独裁者たちの悪夢のようなおとぎ話、とはいえおとぎ話は現代にもまだまだ続いていて、さすがは日独伊三国同盟〜と泣く。今からプーチンの発言とか全部誰か録音しといてほしい。アーカイブ大事。