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7.04

『リトル・マーメイド』

ディズニープリンセスには基本興味がないけどこれだけは別、とにかく昔からアニメ『リトル・マーメイド』は大好きで、アリエルは別格、酒とタバコで喉が潰れる前はカラオケで「part of your world 」も歌い上げたもんです。もちろんセバスチャンも「under the sea」も大好き。ついでにパン屋もめっちゃ好き。
なので実写版ロブ・マーシャル監督『リトル・マーメイド』にはいやが上にも心が躍り、「アリエルが黒人?オッケー!」とウキウキ劇場に向かうがしかし。
お気に入りのセバスチャンとフランダーがめちゃくちゃリアルな蟹と魚だと知った瞬間、アニメ『リトル・マーメイド』の面白さは海の生き物たちが歌ったり躍ったりと愉快に擬人化されてるところだったのに、それを実写化する意味とは……、と行き詰まる。オークワフィナのスカットルは大正解やったけどさ。
アリエル役のハリー・ベイリーちゃん、さすがビヨンセが手塩にかけて育てたシンガーなのも納得、彼女が唄う「part of your world」には、アニメ版にはなかったアリエルの感情、心の動きがダイレクトに込められていて、その歌声の美しさはサブイボが立つほど素晴らしかった。が、彼女が声を失う代わりに足を得て、生まれて初めて人間の世界に行ったとき、まあこれはハリウッド映画あるあるだけど、別の星では世界を救う特別なパワーを持っていたりする女性キャラクターなのに、人間界に来た途端勝手がわからず(体は成熟しているのに)生まれたての赤ん坊のような無知な生き物のように振る舞い、そこでは男性の助けを借りなければ生きられない存在になってしまうフィフス・エレメント現象(私が勝手に呼んでる)と似たようなことが起こっていて、二足歩行に慣れなくてヨロヨロ、まではまあ許そう。しかし足を得たアリエルは終始キョトン顔でおかしな行動をとるだけで、海の中ではあんなにも強い意志を持って自分の意見を主張していたのに、その面影は何処へ…。これは批判されても仕方ないんじゃないでしょうか。せっかくの脱コル的な描写もこれじゃあ信用できないわよ。
あと、全体的に演出が雑過ぎるよね。王子がひとりで恋の歌を熱唱してるところとか、もうちょっとちゃんと撮ったれよと同情。ラストのアリエルの登場の仕方もなんやねんあれ。別にロブ・マーシャルに期待もしてないけど。
あと、アリエルに黒人俳優を配役して多様性を重視してるのかと思いきや王子の船に乗ってる船員は全員白人とか、ポリコレ的にもかなり中途半端。そこは本気でデヴィッド・ロウリー『ピーター・パン&ウェンディ』を見て反省してほしい。
と、楽しみにしていたわりにはかなりがっかりな感想。まとめると、無理して実写化する必要なかったんじゃないかな……。