4.25
『プリシラ』
ソフィア・コッポラ監督最新作『プリシラ』、これはエルヴィス・プレスリーの妻プリシラの物語、或いは三船美佳と高橋ジョージ(プレスリーには程遠いけど…)か。
14歳で既にスーパースターだったプレスリーに恋に落ち、親の反対も押し切って高校生のうちからプレスリーの大豪邸で暮らし始め、彼の色に染まることだけが彼女のすべてに。
映像、物語、すべてが本当に端正で上品。バズ・ラーマン『エルヴィス』ではほぼ主役だったゲスい大佐もここでは声しか出てこない、なぜならあいつは下品だから(『エルヴィス』も大好きやけど)。過去の作品もじゅうぶん美しかったけど、今回の品の良さは大人。
そう大人だから、14歳のプリシラが歳を重ねても本当に「プレスリーが好き」以外のアイデンティティを持たない、かつてのソフィア映画の女の子たちは他人から見れば恵まれた環境の中にいても常に自由を渇望したり「本当の自分」を見てくれる誰かを求めたりしていたけど、プリシラはどこまでもプレスリーだけを求め、彼のためならメイクも衣装も変えるしそのことに疑問も感じない、セックスも結婚も彼に従う、周囲から見ればおバカな女の子だけど、そんな彼女になんの批判もせず、ただ絶妙な距離感で見守る。だって相手は子どもだから。グレタ・ガーウィグも好きやけどちょっと格が違う。だから見ながら、最後にプリシラ本人が気付いたとて、彼女の中身は本当に14歳のままなんだろうなと思うとかなり不安なラストではあった。
プリシラちゃん、体型が日本人風(背が低くて手足が短い)で妙に親近感。確かにチビには柄物は似合わない、プレスリーは正しい。あの、梅図かずお初期作品風盛り髪(特に出産後病院から出てきたとき!)、死ぬまでに一回やってみたい。