『越後奥三面ー山に生かされた人々』
友人から勧められて、ポレポレ東中野さんで姫田忠義監督『越後奥三面ー山に生かされた日々』デジタルリマスター版。
新潟の朝日連峰の懐深くに位置する奥三面(おくみおもて)で生活する40戸あまりの人々、その姿をこの映画を制作した「民族文化映像研究所」のスタッフたちが1980年から4年かけて撮影した記録映像、といえばそれまでなんだけど、これが本当に驚きと感動の連続で夢中で見てしまった。
冒頭奥三面の説明ナレーションと共に空撮で映る村の全貌に、「昔TVで見たダムの底の村みたいやな」と思ったら、まさにこの村は数年後ダムの底に沈むことが決まっているのだった…。
春夏秋冬本当に周りに山しかないこの場所で春は山菜を取り夏はイワナを捕まえ秋はキノコを狩り冬は大雪に備え、町の祭り、祈り、そのいちいちにこの村で生活するための見事な知恵が詰まっていて、感心するしかない鮮やかな手つきで仕事する人々に不便さはまったく感じ取れず、まさに「山に生かされる」生き方の歴史が映っていた。妙に魅力的な監督自身によるナレーション、インタビューはほとんど聞き取れなかったけれど、犬も猫も元気。熊撃ちは酒飲み。これは見られてよかった。
っていうかこれは私が生まれた頃の日本のはずなのに、そのアナログな生活が「昭和初期の田舎」と言われてもすんなり信じてしまいそう(チラッとTVとか映るけど)。あのラスト近く、「先祖の衣装を着て雪山を歩く(大変そう過ぎる…)」男性3人を見てもその姿が自然過ぎて時空が歪む。デジタルリマスターの超鮮やかな映像がより一層認知がバグる。
後半、数年後には廃村し、町で生活しなければならない人たちの「山を出たくない」という言葉が辛いけど、この作品を見ない限り今はもう存在しないこの村に生きる人たちのことを知ることもなかったわけで、記録映画ってすごいし面白いと今さら。