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8.13

『墓泥棒と失われた女神』

猛暑が怖過ぎて映画館まで車出してもらってしまった(そして渋谷の駐車場はバリ高かった)、アリーチェ・ロルバケル監督『墓泥棒と失われた女神』。監督の前作『幸福なラザロ』(18年)は周囲の絶賛にイマイチ乗り切れず、「ラザロ君はほんまにええ奴やな」くらいの感想しか抱けなかったんだけど、今作はかなり楽しかった。とはいえイタリア映画史に詳しいわけではないけど。
「墓泥棒」と聞いて、夜中の墓地に墓荒らしに行く悪い奴らの話かと思ったら、まさか遺跡を狙うようなスケールのデカい墓泥棒で、しかもダウジングでお宝を探すとか、どこまで本気か冗談かとびびっていたら、作品そのものがどこまで現実か夢か幻想か。画面のサイズが変わったりフィルムの質感が複数あることでその境界がより曖昧になる感じ。そこにだんだんと人間と動物の境目も曖昧になるような口喧嘩。舞台となる80年代のトスカーナがまた美しくて夢っぽくて。
でも出所後の主人公を歓迎してくれる仕事仲間が意外とウザい奴らだったり、娘たちは所詮は母親のことなんか考えてなかったり、現実の厳しさは結構辛い。主人公のアーサーには現実より幻想の方が生きやすいからのラストなのかと思ったりした。
アーサー役のジョシュ・オコナー君、役者としては悪くないと思ってたから『チャレンジャーズ』みたいなバカ映画じゃなくてこんな立派な作品で頑張ってて嬉しかった。髪の毛が短いと一気に猿っぽさ倍増なのね、それもよかった。