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8.29

『フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーンムーン』

その日はもう暑過ぎて、ショッピングモールのシネコンまで車で行って駐車場が無料のうちに映画だけ見てサクッと帰る作戦でいかさせていただきました、グレッグ・バーランティ監督『フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン』。そしてこれを見て最近薄々感じていた、「ハリウッド映画にラブコメ(ロマコメ)が戻ってきてる気がする」という予感が確信に変わったと言っていいでしょう。ただ、一昔前のラブコメと違って、ラブと同じくらいの重量で別の物語がそこにあるラブコメ、とでも言うか。
予告ではアポロ計画のフェイク映像を巡る話がメインの映画っぽかったけど、実際には、NASAのアポロ発射責任者コール(チャニング・テイタム)とPRマーケティングのプロであるケリー(スカーレット・ヨハンソン)の、きちんと自分の仕事を遂行する大人の男女がお互いを尊重しつつ惹かれ合うラブコメであり、それぞれの仕事に苦悩する普通の若者の話でもあり、アメリカと宇宙開発を巡る皮肉なコメディでもあり、それらバランスがとても良い、可愛い映画であった。
ただ私たちは、『ドリーム』(16年)を見ているのでこの時代のNASAは計算係として黒人女性を雇いながらも黒人用のトイレがオフィス内にはなかったことを知っているし、『ファースト・マン』(18年)を見ているのでアームストロングがこのあと取り憑かれたように宇宙行きを繰り返し妻に離婚されることや、NASAの周りでは宇宙開発に反対するデモが連日行われていたことを知っている。映画は勉強になりますね。
だけれども、この『フライ・ミー〜』は、そんなことは百も承知で陰謀論を取り扱い、猫だけが真実なんかどうでもいいとNASAの中を走り回る、何が大事なのかをはっきりと見せてくれる、意外と生真面目なことろが憎めないところがすごく良かったりしたのであった。