『ソウルの春』
ようやく9月に見た映画メモに突入、キム・ソンス監督『ソウルの春』。監督の人気作『アシュラ』(17年)は未見。
私が生まれた79年、両親は日本の高度経済成長についていくのに必死で祖国で何が起こっているかなんてまったく知らなかったと申しておりますが、その12月12日一夜に起こった全斗煥による軍事クーデター、をフィクションを交えた内容を、圧倒的な迫力で見せてくれて、もはや韓国映画と日本映画を比べるのも申し訳ない作品となっております。この事件を映画化した作品(『弁護人』『タクシー運転手』『1978、ある闘いの真実』または『KCIA 南山の部長たち』)を見るたび、自国の黒い過去を冷静に見つめられるまともな精神が本当にまとも過ぎて毎回感動する。
フィクションを交えているので登場人物の名前も変えられているのだが、みんな言ってるし前からわかってたけど、やっぱりファン・ジョンミンの悪役が上手過ぎて、完全に全斗煥のイメージはこれになってしまった。禿げオヤジめ。
固定電話とタバコから始まった戦いがあれよあれよと戦車や戦闘機を召喚し夜のソウルが戦場と化す、その内実はクーデター陣営のグダグダした内輪のやりとり、政府側の裏切りに次ぐ裏切り。本気で「こんなんでクーデターが成功しまっか?」と思いながら見ててもやっぱり成功してしまう、わかってたけど、変な感じ。圧倒的に悪い奴らが勝ってしまった世界って、映画であんまり見ないからさ(現実では安倍が政権をとってあれよあれよとネトウヨ国家になる感じかなと思ったり)。
結果を知っていても、お互い一歩も引かない緊張感張り詰める男たちの駆け引き、あっちとこっちどっちが優位に立てるか、手に汗握る142分間はお見事でございました。ドラマ「DP」からのゲスト出演かと思ったチョン・ヘインくんが良い軍人役で活躍しててよかった…。ファン・ジョンミンと闘うイ・テシン役のチョン・ウソン氏、顔面がトム・クルーズに似ている。
余談ですけど、軍事クーデターを成功させその後大統領となり大韓民国の民衆を苦しめた全斗煥チャン・ドゥンファン、その側近の盧泰愚ノ・テウ(映画ではノ・テゴン)。私の父の苗字は全で、母の苗字は盧。なんの因果か。