『SUPER HAPPY FOREVER』
色んなところから絶賛の声が聞こえてくる、五十嵐耕平監督『SUPER HAPPY FOREVER』を。
どうやら妻を突然死で亡くしたらしい男がふたりの思い出の場所であるらしい海沿いのホテルに友だちと泊まりに来て、妻との思い出と思い出の品を求めて自暴自棄気味に振る舞っている前半、妻になる女性とこの場所で偶然出会って恋に落ちたドラマが後半、思い出の品が効いてくるラスト、ってところでしょうか。美しい海と観光地特有の雰囲気がいい感じに盛り上げてくれます。
見ながらまず思ったのは、人が大切な相手を亡くしたときこの主人公みたいな行動とるかなあという疑問。人が亡くなったときめちゃくちゃやることがあるのは亡くした悲しみを感じさせないためって言われるくらい、携帯海に投げ捨てたからって解決しないほど事務的なこといっぱいあると思うねんけど…という現実的で地味な疑問と、この主人公は妻の死を完璧に理解して「妻は死んだ」という前提でその後を生きてるけど、死んでることと生きてることってそんなスパッと割り切れるかなあという疑問。死者の存在としての気配みたいなものがなさ過ぎて逆にリアルじゃないというか。だからラスト、あの帽子をかぶったベトナム人を妻と見間違えて声を掛ける、くらいの展開があってはじめて「偶然」とか「永遠」って言葉が出てくるんじゃないのと思ってしまった。死んだらもう会えないとか、寂しいやんね。
後半はもう、内容が前半で既に説明されてるとはいえ妻役の山本奈衣留さんの魅力に参りました。あの都会的な身体と豊かな表情、彼女のおかげで「恋に落ちる」ってことの説得力が満点。監督はモテる女の子というものを熟知してらゃっしゃる。カップヌードルのシーンはちょっとやり過ぎでやや醒めたけど。
こういう美しい過去を思い出して(同じ場所まで来て)、「あの頃に戻りたい」という気持ちになるのはわからなくはないが、まだ若いのにそない過去しか見てないのもなあという老婆心。