1.16
『オークション』
そろそろまともな映画をと、パスカル・ボニゼール監督『オークション 盗まれたエゴン・シーレ』。ボニゼールさんがリヴェットの脚本家だったとか全然知らなかった私…。
サクサク進む91分間に、偶然発見されたエゴン・シーレの幻の絵画を巡って、絵画を発見した青年(地方の工場労働者)、その絵画の所有を求める人間(インテリブルジョアたち)、みんなの複雑な思惑がどういう結果に落ち着くのかのスリリングな脚本が、ちょっとした目線や仕草で演出される、「久しぶりにこういう上質なフランス映画見たわ〜」とこんな私にも面白さが伝わる楽しい映画でございました。地方の民家からエゴン・シーレの絵画が発見されたというのは実話らしく(それだけで嘘みたいな話や)、そこからナチスの黒い歴史に繋がる歴史。
いかにも仕立ての良さそうなスーツを着こなすインテリでいけすかないけどなんか憎めない主人公、最後までようわからんかったけど多分悪い子じゃない研修生、ただただいい子だったネクタイが苦手な労働青年。青年の友だちが悪い奴だったらどうしよう…と一瞬考えてしまった自分の汚れた心が恥ずかしい握手での仲直り。
みんな自分のやるべきことをやってるだけだけど、でもなんか、価値がある人にはあるけどない人にはない(千鳥)ようなものに対して大の大人が必死になってるのは少し滑稽でもあった。ガチのオークションの世界ってすごいのね。でもあれって最近流行りの転売ヤーと何が違うのかあんまりよくわかってなかったりもする。