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1.31

『映画を愛する君へ』

近年劇場公開作品以外は見逃しがちなアルノー・デプレシャン監督に『映画を愛する君へ』と言われると、「いや別に愛とかそういうんじゃないですけど…」と口篭ってしまう天野邪子(奇面組)。
デプレシャン監督自身の、シネフィルが映画監督になるまでの自伝的な物語と、19世紀末アメリカが「フィルム」を、フランスが「シネマ」を発見する映画の誕生から現在に至るまでの映画史が描かれる、シネマ・エッセイっていうジャンルらしい映画。
自伝部分では、やっぱりフランスのシネフィルは日本と違って女の子といちゃつきながら映画も見てる健全さがいいわね。単にデプレシャンがモテただけかもしれんが。
デプレシャン先生による映画史の解説ではグリフィス作品の偏見に満ちた差別に言及してる真面目さに感心したり、「この人ほんまにジュリア・ロバーツ好きやねんな〜」と感動したりできたのだがしかし。
中盤、若き日の監督がクロード・ランズマン監督『SHOAHショア』(85年)に大変大きな衝撃を受けたこと、そこからしばらく『ショア』についての話になって行くあたりでちょっと不安に。今の世界を鑑みると素直に受け止めていいもんやら…と思ってしまうし、そもそも10年くらい前に『ショア』を見たときモヤモヤしたものを感じたりしたので、正直デプレシャンのこの手放しの熱量にはややついていけないものもあった。
それでもこの配信時代、こうして堂々と「映画って本当にいいもんですね!」と晴郎ばりに伝えてくれるでプレシャン64歳、もっと若いお客さんが見てくれるといいなとは素直に思えた。それでもやっぱり「個人的には愛とかじゃないんですけどね…」とは言う。