BLOG

2.23

『ファーストキス 1ST KISS』

『花束みたいな恋をした』(21年)を偏愛する者としては、坂元裕二脚本久しぶりのまっすぐなラブストーリーかと結構本気で楽しみにしてたんですよ、塚原あゆ子監督『ファーストキス』(『ラストマイル』は未見。塚原監督作品でまともに見たのはドラマ含めても『映画 グランメゾン・パリ』くらいか…)。
それがまさかこんなペッラペラのSFもどき、話もあってないような映画だとは。それはそれで結構衝撃だったけど、脚本家としてこんなゆるゆるで大丈夫?とまで思ってしまった。
多分、普通の恋愛ものじゃ物足りないからタイムワープものにして、主演ふたりの年齢差からこういう話にするしかなかったんだろうけど、そういう都合というか事情の賜物って感じ。タイムワープものは嫌いじゃないけどこの映画みたいにいつでも行って帰ってこれるっていくらなんでも都合良過ぎて緊張感なさ過ぎて全然盛り上がらない。
全編に渡って坂元裕二ファンが好きそうな「つい笑ってしまう気の利いた会話」がこれでもかってくらいに散りばめられていて、それを松たか子と松村北斗が器用に演じるんだけど、このふたりの上手さじゃなかったらとてもじゃないけど見てられなかっただろうし、こんなものに騙されないぞ。
SF的展開にも穴があり過ぎで本気で突っ込むのもどうかと思うレベルやけど、さすがに、映画のラストを迎えるときあのワープしてた松たか子はどこに行ったの?舞台美術の仕事は?まさか多元宇宙?あんなショボいトンネル事故ひとつでそれはさすがに無理があるかと。多元宇宙/マルチバースって多分『スパイダーマン:スパイダース』シリーズくらい本気でやらないと面白くならない。
とは言うものの。この作品が「それはそれは可愛い29歳の男の子が45歳多毛量女性に恋に落ちる」というファンタジーとしては大変素晴らしいことは認めざるを得ない(というかそっちの方がマルチバースかもね…)。しかし同じ45歳でも私くらい超絶多毛量になると「じゃかましい!こんな男おるか!」とすぐ現実に戻れるので無問題。