『野生の島のロズ』
劇場で自分の席に行くと隣4人が小学校低学年くらいのキッズだったのでちょっと焦った、クリス・サンダース監督『野生の島のロズ』。しかし劇中子どもたちが音を立てて飲み物を飲んだり立ったり喋ったりしてるのも気にならないくらい中年ひとり客の私は号泣していたので無問題。
予告を見る限り「心を持たないはずのロボットが生き物と気持ちを通わす物語」な雰囲気で、「ロボットが感情を持つって結構際どいんじゃないの」と思ってたんだけど、この映画は、元々の「ロボットのプログラム」とあるはずのない「ロボットの心」のグラデーションが非常に繊細に描かれていて、その変化に説得力があって、まんまとこちらの心も動く動く。
動物しかいない島に不時着したスーパーお仕事ロボットのロズ、拾った卵が自分の手の中で孵化してしまい、生まれたひな鳥のキラリはロズのことを母親だと認識する。島の動物たちには化け物だと認識されるロズだが賢明に「子育て」というお仕事をまっとうしようとする姿に協力してくれるものも現れ、無事キラリを立派な渡鳥に育て上げるのだが…。前半ちょっと展開早すぎるかなと思ったけど丁寧に説明してたら子どもは飽きるもんね、これくらいが最適なのか。島の動物たちがみんな結構根性悪くて笑ってしまった。
アニメーションとして、ディズニーやピクサー作品にたまに起るような信じられない奇跡みたいな瞬間があるわけではないけれど、動物たちの運動や鳥の集団が飛ぶ姿はそれだけで楽しい。ロボットの造形とか自然の描写にはそこはかとない宮崎駿感。そして泣かせに来てる演出が普通にめっちゃ泣ける。
吹き替えで見たんだけど、ロズ役が綾瀬はるかで、これはロズの性別が最初から女性設定なのか母親の役割を担ったから三人称が「彼女」になったのかはわからない。ただ、この映画はロズに芽生えたものが「母性」ではないとはっきり言っているとは思う。