11.26
『おーい、応為』
葛飾北斎の娘を題材にしたアニメ『百日紅』(15年)は劇場で見たよ、今作は同じ原作で実写化とのこと、大森立嗣監督『おーい、応為』。おーいおうい。
気が強くて口が悪くてキセルを吸う北斎の娘・お栄(応為)を演じる長澤まさみクンが、着物には収まらない長い手足を持て余し、汚い貧乏長屋で父親(永瀬正敏)と怒鳴りあったりガサツに蕎麦を食べたり大股で歩いたりする姿がとても良くて、若い頃はキモい映画監督の妄想に付き合わされがちだったけど最近は『ロストケア』(23年前田哲監督)とか今作とか、ちゃんと人間として扱ってくれるまともな作品に出会えるようになってほんと良かったねと勝手に祝福。まさみクンを被写体にして足の露出シーンを一回に留めた大森監督は立派だ。そしてプロの犬はマジで凄いぞ。
北斎演じる永瀬正敏も最近の中では一番ってくらいに良いんだけど(特に晩年の老けメイク)この親娘を主役に、ストーリーとしては特にドラマチックな出来事が起こるわけでもなく、ただふたりが絵を描きながら歳をとっていくだけと言えばだけなんだけど、かなり独特な編集のリズムのせいで不思議な時間の流れになっていて、退屈はしない。セットも何気に豪華で、こんな風に丁寧に撮られた日本映画を若い人に見てほしいなあと思うけど、劇場は初老夫婦でいっぱいだったのは題材のせいか。北斎もかなりの変人で面白い人なのにね。
北斎とお栄が互いの絵を認め合っていたのはわかったが、この時代「超有名絵師の父親と同じ職業に就く」ということがなんの葛藤もなく受け入れられていたのかは見ながらちょっと気になった。

