12.03
『サラバ、さらんへ、サラバ』
正直26分の短編映画のためにえっちらおっちら乗り換えて菊川の映画館まで行くのはかなり腰が重かったんだけど、見てみてびっくり、めちゃくちゃ面白かった、洪先恵(ホン・ソネ)監督『サラバ、さらんへ、サラバ』。行って良かった。
茨城県の田舎町に住む女子高生カップル仁美と菜穂を通して、人が人に恋することの喜びと切なさと苦しさや、好きな人の肉体に触れる楽しさ、そして別れの悲しさと悔しさ。ただ一組の恋人同士が別れるだけの話なのに、大事なことがギュッと詰まった26分。ものすごく濃密なのにあくまでポップな世界、軽薄にも見えかねない若さがしっかり尊い。そしてその様に感動する中年。あの色のジュースを飲めるのも若いからであろう。
まだ十代の女の子たちを襲う理不尽な大人の社会の存在、子どもは絶対勝てないとわかっていても、最後までジタバタとカッコ悪くもがく姿はかっこ悪くて恥ずかしいけど、ずるい大人みたいに曖昧なまま終わらせないのが最高にかっこいい。
ホン監督自身が韓国で日本で体験してきた社会の常識の中で感じる苦しみを、仁美と菜穂には絶対にそんなことを体験させるものかこの子たちを傷つけてたまるものかという大人な態度が映画を貫き通していて、その姿勢と覚悟も惚れ惚れかっこいい。今作が初監督作品とのこと、このまま突っ走ってほしい。

