BLOG

3.13

『ミックスモダン』

大阪人にとってお好み焼きとはまず自宅で作るもので、外食するとすればチェーン店より家の近くの本当に生まれた頃から通っている小さな自営店が「美味しい店」になるものなので、「千房(ちぼう)」といえばもちろんその存在は知っているけど実際食べに行った記憶があるのワイキキのロイヤルハワイアンセンター店だけで(そこはめっちゃ通った。去年行ったときなくなってて超ショック)、それはつまりハワイに行っても食べたいくらいお好み焼き好き族なのが大阪人であるわけで、そんな私が今後お好み焼きは絶対「千房でしか食べへんで!!」と強く心に誓ったのは、藤原稔三監督『ミックスモダン』を見たから。それくらい心打たれた。
千房が少年院から出てきた青年たちの就労支援を積極的に行なっている(「職親プロジェクト」というらしい)のは前から知っていたけど、今作はその事実から発想を得て作られた、仮出所してきた18歳の青年と、彼の身元引受人となったお好み焼き屋を営む夫婦の物語。「生まれ変わりたい」と意気込みながらも抑えきれない欲望を抱く若者、立ち直って欲しいと願いながらも自分たちも決して完璧ではない周りの大人たち。一見マジメな教育映画みたいな顔して、端正な演出とクールな編集でまったく切れない緊張感、でも伝わってくるものはめっちゃ熱くて、最終的には号泣してまう傑作。これはちょっとびっくりした。
劇中のお好み焼き屋夫婦(特に奥さん)の選択や発言すべてに同意するわけではないけれど、この人が今ここでそれを言う説得力が凄い。監督兼お好み焼き屋の亭主を演じるパーカー姿の藤原さんが泣く瞬間、こんなん初めて見たかも(てかこの藤原稔三さん、監督作は3作目で出演作は黒澤明作品という超ベテラン、しかもめっちゃいい芝居するのに全然存じ上げなかった自分の無知を恥じる…)。
藤田朋子演じる姉のウザさもたまらん、マスクをつけた婦人科医が「川平慈英に似てるなー」と思ってたらほんまに川平慈英だった。
もちろん千房の活動と全面協力のうえに成り立った作品だけれども、この作品をきっかけに知るのも良し、これは是非たくさんの人に見てほしい映画。