11.15
『赤線地帯』
さすがにこれを見逃すわけにはいかぬ、とフィルムセンターの溝口健二監督特集に、『赤線地帯』(56年)を見に行く。平日の昼下がりだというのに満席御礼。今までなんでか見る機会がなく今回が初見。
売春禁止法が成立するかしないかの時期の娼婦たちの物語、で、群像劇っていうのかしら。とりあえず出てくる5人の女たちがみんな悲惨で滑稽で、泣いていいのか笑っていいのか、常に半泣き笑いみたいな変な顔で見てしまった。でもゆめこ(三益愛子)が橋の上で歌を唄いだすところでは涙々々。小暮実千代の夫婦の姿にも泣いたなあ。ラーメン食べてるところとか。もちろん自殺未遂のシーンもさ。京マチコと父親のやりとりにも泣いたなあ。町田博子の送別会でも泣いたなあ。と、結局泣きっ放し。そして、若尾文子の美しさよ。『祇園囃子』からたった3年しか経ってないとは信じられない女っぷり。気の強い役を演じてる若尾文子最高(『刺青』とか)。超うっとりしまくり。撮影は死ぬ程大変だったと先日のシンポジウムで話しておられたが。
映画自体も勿論、セットから撮影から音楽(なんか変わってたな)から、全てが素晴らしく、しかもまたこれが85分という上映時間で。個人的にはパーフェクトな満足感。よかよか。
が、ラストシーンが怖過ぎて本気で震えた。なんなんだあれは。こんなものを遺作にして死んでいった溝口健二、恐ろし過ぎる。
夜は、昨年に引き続き新宿にて酉の市。都会の祭りはやっぱり派手やねえ。