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3.02

ロングテロリスト(無念)

ジム・オルークさん御本人からの強力プッシュを改めて受け、これは急いで見なければ!と足立正生監督『幽閉者(テロリスト)』に駆けつけた、のだが、またしても時期的に作品のチョイスを間違ったっぽく、必要以上に疲れる…。拷問シーンで責める映画を週に2回も見るもんじゃない。全く個人的な事情でこんな感想でごめんなさい。

「足立監督35年ぶりの新作!」「映画のモデルは岡本公三!」という騒ぎに一緒になって盛り上がってみたものの、よく考えると足立監督の作品や経歴を詳しくは知らず、72年のリッダ空港襲撃事件についてはほぼ無知状態な自分に気付く。およよ。なので、劇中に出てくる有名らしきテロリストや思想家に扮した登場人物が一体誰のことなのかわからない、って時点で躓いてしまい、多分この作品に対する理解度の低さでは1、2を争う観客に成り下がったはず。およよよ。

高橋洋監督『ソドムの市』風の画面のノリとまるで本を読んでる様な気分になる程ひたすら観念的な言葉で責めてくる方法は、世界にはこういう映画も必要なのだという意味で理解出来たけど、ちょいちょい現れる主人公の「物語」が結局はトラウマかい、ってのがなんとなく残念だった。あと、田口トモロヲの芝居はすごいと思ったけど、もうちょとやつれる過程を表現してもいいんじゃないかと細かいことが気になった。大友良英&ジム・オルークによる音楽はかっちょよかった。

と、若干の疲れを抱えつつも私にしては珍しく1時間しか間を置かずにル・シネマさんのロバート・アルトマン監督特集に向かう。初期の作品殆どスクリーンで見たことないなってことで、『ロング・グッドバイ』(73年)。遺作である新作の前売り券を提示すると千円で見れるというお得企画。

これがまあかっこいいの面白いので「アルトマンすごい!」と今更感動。エリオット・グールド演じるグダグダな私立探偵が事件を解決してないようなしてるような、地味なお話&画面なんだけど、まずこの主人公がかっこいい。私もこんな風に地球全てを利用して煙草に火をつけたい(最近の映画で、銃も撃たずにセックスもせずに、地味だけどかっこいい主人公ってなんであまり成立しないのだろう)。

ほんでから、主人公の家の向いに住む裸女の集団とか物真似好きの警備員とか物語に一切関係ないのに頻出するというやんちゃが面白くて気に入った。それ以外にもギャグがちゃんと笑えて。海辺の家も素敵だったし、入水自殺したおっさんを助けにいくシーンは見てるだけで撮影の危険を想像すると恐ろしくなった。ほんと昔の人は無茶しますね。

ラスト、ぽんぽん謎解きが進んでいった挙げ句主人公のとった行動と一瞬のダンスに痺れた。この映画も音楽がかっちょよかった。と大満足なのだが、飼い猫(演技派)の行方だけが心残り。