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3.22

孔雀のばら

これまた時間と場所が丁度いいからという適当な理由で見た中国映画『孔雀』がどえらく面白くて嬉しかった。面白いっつうか、136分間何もかもが上手過ぎて、見ててだんだんむかつく位演出も脚本も画面も文句のつけようがなく。クー・チャンウェイという監督さん、これがデビュー作だけど、チャン・イーモウやアルトマンの撮影をしてた方だそうな。

1970年代後半から80年代にかけての中国の小さな地方都市に住む一家の物語。前半は1人娘の人生、後半は知恵おくれの兄と物語の語り部である静かな弟の人生をメインに話は進む。恋したり軍隊に志願したり神経病んだり仕事探したり親と喧嘩したり家族に殺意を覚えたり家出したり結婚したり離婚したり。チラッと映るハツカネズミのように平凡を繰り返す人たち。本当に静かな映画なんだけどあらゆるものが丁寧に作られて撮られてる感じがものすごくよろしい。最終的に悲しい気持ちになるのもよろしい。久しぶりに満足した「家族映画」。侯孝賢監督に関するトークイベントで中原昌也さんが仰っていた「なぜこういう映画が日本で撮られないのか」という言葉を思い出す。特に難しいロケーションとかしてるわけでもないのに、こういう満足感を与えてくれる作品て最近の邦画にないなあ。

まあそんなことより、主演のチャン・チンチューという女優が本当に良い。ビビアン・スーと中村優子を合せた風の可愛さで、つるつるの肌と髪の毛。彼女が不機嫌な顔で黙々と瓶を洗ってる姿だけで心打たれまくる。自転車で落下傘とトマトを選びながらの号泣が特にやばかった。他の役者さんもみんなとても良かったけど。

クレジットを見てると製作に日本が絡んでるっぽいのにあんまり宣伝もされず、上映終了も近いそう。でもこれ多分見た方がいいですよ。

と、メインの前に既に大満足感有りだけどこっちが目当てだったのだとジャック・ドゥミ特集にて『ベルサイユのばら』(78年)。原作は勿論池田理代子先生。日仏合作作品。なぜか全編英語&なぜかフランス未公開(この2つの謎の答えを知ってる人誰か教えて下さい)。でも映画になるくらいなんだからフランス人が読んだであろう「ベルばら」を、実は私は読んだことがなく。今回初めて「こんな話やってんや!」と知った次第。

作品は、こないだ見た『ローラ』のイメージはどこへやら、ほんまに漫画そのまんまコスプレ劇みたいに進んでいく感じに初めはちょっと戸惑ったけど、やっぱり音楽の使われ方とか子どもの歌声とかが素敵で痺れる。出てくる役者の顔がみんな美しくてうっとりする。でも見てる間ずっと「なんで日本人プロデューサーはこの監督に頼んだんだろう…」という疑問が浮かんでしまう違和感は拭えず、でもそれがまた面白かった。伝わるかしらこの感覚。

なんか変わったもん見てもうた、と混乱する頭を抱え素直に帰宅、のはずが、本日は数年に一度の奢られデーだったらしく、調子に乗って勢いづいて朝帰り。そして反省。