実録デジャヴ
楽しみにしていたラピュタ阿佐ヶ谷さんでの田中登監督特集が始まったので、いそいそと『実録 阿部定』(75年)を見に行く。結構混んでて焦る。
76分と短めの映画なのに密度が濃くって観賞後はお腹いっぱい。特に前半の、雨戸を閉め切ってもスクリーンから匂いが漏れてきそうな狭い室内でひたすら定と吉がセックスしてるシーンの連続と、たまに現れる定(宮下順子)の無邪気な笑顔が怖くて美しくて。赤い着物と敷物が眩しかった。勿論後半の宮下順子の涙や独白もたまらなく綺麗だった。大島渚監督の『愛のコリーダ』は藤竜也のかっこよさに眼を奪われっ放しだったけど、今回の吉(江角英明)はなんか情けなくて笑えてこれはこれですごく良かった(そもそも阿部定事件って何を見たり聞いたりしても笑ってしまうけど)。ロマンポルノだからってわけじゃないだろうけど、お客さんが9割9分男性だったことだけが心残り。
で、再びいそいそと新宿に移動して、ほんまかいなと疑ってしまう程周囲で評判のいいトニー・スコット監督の『デジャヴ』(←新庄おもろい)を見る。私もトニー・スコットのここ数年の執拗さは大好きですけど、ここまでみんなが褒めるとはどんなもんかいなと。
で、見てみて、途中まで早合点して「これは「映画」に関する映画なのね」と思ってたら、突然色んなものが暴走しだして手に負えなくなって、大変面白かった。こんなに好き放題やってええんかいなと心配になる程めちゃくちゃやったけど(でもどうせならもっと暴れても良かったんじゃないかとちょっと思った)、でも相変わらずしつこくて、相変わらずデンゼル・ワシントンはかっこよくて(久しぶりに見たヴァル・キルマーの太りっぷりにはややショックを受けた)。犯人逮捕の瞬間は、それこそ巻き戻しして見たかったぜ。
と、結局は大満足。前評判は確かだったようです。