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4.12

『素粒子』

98年に発売された当時「世界中に衝撃を与えた」そうだが、私はつい最近読んだばかりのミシェル・ウェルベックの「素粒子」が面白かったので映画版『素粒子』(オスカー・レーラー監督)を見に行く。

原作の小説は、よくもまあここまでというくらい世の中や人生を冷淡にこっけいに痛々しく、天才科学者の弟とセックス中毒の兄の異父兄弟を主人公に書かれたもので、映画化するにはちょっと長いしこの微妙な感覚が表現出来るのか知らんと少し不安だったのだが、これがまたえらく痛く切なく、こんなに人生のどうしようもなさを見せつけてくれなくていいじゃないかと感じてしまう程なかなか良く出来た作品になっていたのでした。大傑作!と思ったわけではないが、久しぶりに途中から涙が止まらなかった。40男の「人生のイベントなんて病気くらいだ」という言葉が耳を離れない。監督さんは「ファスビンダーの真の後継者」だそうな。

映画は主に兄のエピソードを中心に作られてるんだけど、これがまた私の想像してた通りの顔の役者(モーリッツ・ブライプトロイ)が演じてて、芝居もすっごくいい。セックスのことしか頭にないバカ男、悲惨なトラウマを抱えてるけどそんなことはどうでもいい、とりあえずセックス、という難しいバランスと、恋人(マルティナ・ゲデック。彼女がまたすごく良い)と出会ってからの変化したようなしてないような男の姿が見てるだけでなんか泣ける。弟役(世界のヘイポー似)も勿論悪くはなかったけど。

あああでもほんとこんな映画を見てしまうと、改めて人生なんて幸せな瞬間はあってもほんとはかない瞬間なのよねと分かってたけど今更身につまされる。痛たたたた。