エロスはぬけられます
ものすごい映画を見てものすごい衝撃を受けたのだけれど、なんでかドタバタしてて時間がないので手短にメモ。
シネマヴェーラさんでの「官能の帝国 ロマンポルノ再入門」特集にて、藤田敏八監督の『エロスは甘き香り』(73年)。行きずりなのか知り合いなのかよくわからない二組のカップルが狭い一軒家で共同生活を始める。徐々に何かが狂っていく。
冒頭の、主人公が歩いてる途中背後に突然超低空飛行の飛行機が現れるショットで度肝を抜かれ、若き日の桃井かおり&伊佐山ひろ子の可愛さと大胆なセックスシーンに衝撃を受け、絶対ほんまにやってるやろと思われる豚の頭を切断するシーンには驚きのあまり笑いさえ出てしまった。そんなショッキングな映像とは裏腹に、アホな男と女が繰り返す子どもじみた生活が妙に切なくて泣ける。素敵な映画であった。
柛代辰巳監督の『赤線玉の井 ぬけられます』(74年)。売春禁止法が施行される直前の新年をそれぞれに過ごす売春婦達の物語。
あまりにも切ない、哀しい。見終わった後、本当に言葉が出なかった。私が赤線モノの映画が好きな理由は、絶対に哀しいはずなのに何故かどの作品も出てくる女たちが明るくて強くて、見てて楽しくなるからだったのに、思いっきり覆されてしまった。勿論笑える場面もあるのだけれど、笑う余裕すらなくしてしまった。
せっかく結婚したのに旦那のセックスに満足出来ずお店に帰ってきてしまう女の、結婚相手の家に行くシーンやら初めての仕事の回想シーンやら(長いけどまじすごい)、宮下順子がヒモの男(蟹江敬三。『文学賞殺人事件』!)を海辺で待つカットやら、何がそこまでと不思議な程がつんとやられてしまいました。少ししか出てこないけど、首つりの練習が日課な女にも落涙。途中で不意に流れる女の鼻歌効果もすごい。いやああ、見て良かった。本当にすごい映画であった。
かなり生々しいセックス描写が連発の映画なのに、冒頭には天皇と美智子さんのテニスしてる写真&劇中流れる曲は「君が代」。『パッチギ!』なんかで反骨ぶってる場合じゃなかったですね、やっぱり。
って、結局いつも通りの長さになってしまった。なは。