コントラクトの虹
そう言えば最近の作品以外殆ど劇場で見たことないなと気付き、ユーロスペースさんのアキ・カウリスマキ監督特集にてろてろ向かう。
『コントラクト・キラー』(90年)。初見。おっさん化したジャン=ピエール・レオーの、ぴっちり横分け(鼻でか兄さんですね、レオーも)っぷりに若干のショックを受けるも、途中から映画のあまりの素晴らしさにそんなことも気にならなくなる(でも最後の方で前髪をかきあげる仕草が見れたのは嬉しかった)。
突然解雇を言い渡された主人公が契約殺人(コントラクト・キラー)に自分の殺害を依頼。が、直後に人生初めての恋に落ちてしまい殺し屋から必死で逃げることになってしまう。
相変わらず大して美しくない男女の恋のやりとりに泣ける。女の人が寝てるときの肌のシミとかひどいんだけど、それが美しく見えるからあら不思議。笑いどころもいちいち面白くて。と、書いていて、この笑いと切なさの振り幅が松本人志の「とかげのおっさん」に通じるものがあると気付いた。労働者階級に祖国はない、ってセリフは多分とかげ的存在(他の具体例が思い浮かばないけど…)にも当てはまるんじゃなかろうか。
ラストの窓を眺めるカットに、意味はよくわかってなかったけど涙。
『真夜中の虹』(88年)。初見。これまた、職を失った冴えない元炭坑夫のおっさんが、オープンカーに乗って街に出て冴えない子持ちのおばさんと恋に落ちるも、金盗まれたり日雇い労働したり警察に捕まったりと不幸に見舞われまくる物語なのに、胸キュンできて笑えて泣ける。刑務所で結婚指輪を手作りするところには心打たれ過ぎてやばかった。やっぱり『幸せのちから』の教会なんてダメダメ過ぎたんだなと改めて気付く。
ほんま、紙芝居みたいに淡々と静かな映像と芝居がフェードアウトで繋がれてるだけなのになんでこんなに面白いんだろうと不思議で仕方がない。あああ、早く最新作『街のあかり』が見たい。
年甲斐もなくミニスカートなんて履いてたもんやから、映画2本立てで体が芯から冷える。反省。