『イントゥ・ザ・ワイルド』
ショーン・ペン監督の映画って見た後必ずブルーな気持ちになるという印象があるのですがなんか今回は評判いいしタイトルも爽やかやしということで『イントゥ・ザ・ワイルド』を見に行ったらやっぱりただのロハス映画では終わらないひどくブルーと言うか現実ってそうよねと黙り込まされる映画だったのでした。
自分の家庭環境と資本主義に嫌気のさした主人公が大学卒業と同時に失踪の如く自分探しの旅に出る、という物語自体には1ミクロの興味も持てなかったが、自分探しの度を超えて本当に厳しい自然の中で野性的な生活をしてるエミール・ハーシュくん(『ロード・オブドッグタウン』のディカプリオ似なかわいこちゃん)の姿はかなり魅力的であった。鹿やら馬やら狼やらの群れや激流の川下りやばかでかいエゾシカや熊を見てるだけで楽しく、またそんな山奥でもはやフィクションではなく実際にやらされてるんだろうなと思えるハーシュくんのハードな生活っぷり(鹿の解体とか)は148分退屈を感じることはなかった(勿論ロハス万歳とか自然大好き映画なわけじゃなく、むしろやっぱり田舎生活なんて絶対やだと新たに決意、ってか無理ってところが一番良い)。故に物語の弱さがだいぶ残念か(なんか、詳しく書く気にもならない)。物語同様主人公のキャラクターにも特に惹かれなかったが彼が旅の途中で出会う人たちはみんな魅力的で、個人的には最後のおじいちゃんに一番ぐっときた。ロープウェイみたいなやつの中で見つめ合うふたりにはちょっと泣きかけた。あと女の子とのライブシーンもちょっとぐっときた。でも泣かない。
フィクションじゃないと言えば、ラストのハーシュくんのこの痩せっぷりはやっぱり凄いと感心しないわけにはいかない。が、最終的に妹のナレーションってがちょっと気になった。結局丸投げかい、みたいな。やっぱり男子って勝手よねと言いたくもなるけれど元ヤク中のDV男がこんな映画を作ったという更生っぷりに免じて黙ることにする。あと、音楽や自然の音がかなり凄まじいので、この映像と音響は映画館で体感しなきゃ意味のない映画だと思われる。水曜だからかだいぶ大入り、良いことだと思われる。いい映画だとは思います。