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12.15

『トロピック・サンダー 史上最低の作戦』

とまあ爪がべろーんと剥がれて微妙に下がり気味のテンションを上げるべくなんか楽しそうやからベン・スティラー監督最新作『トロピック・サンダー 史上最低の作戦』 でも見るベと軽い気持ちで行ってみたら大火傷。これが今年どころか私史上ナンバーワンになるかもな勢いで素晴らしい「アメリカ映画」だったのでした。本当に良かった。文句なしでベン監督最高傑作(過去の作品はほとんどチェキってる派)。
人気下降気味の俳優たちが戦争映画の撮影中に本物の危険地帯に行ってしまって大騒ぎ。そのあれこれがもちろん様々なギャグで彩られ、その全てが本気で面白いのに感心するのはまだ序の口(パンダ殺すのとか無意味な牛とか最高やけど)。下世話やブラックを超えた本気で真剣に批評に満ちた笑いに感動した。
黒人役になりきるために肌の色素を変えた(だから暗闇の奇襲作戦が得意)ロバート・ダウニー・Jr.が 『アイアンマン』の比にならないくらい良い。実はコアラ臭いオーストラリア人の彼と本物の黒人(役名はアルパ・チーノ)のどーでもいい切り返しのしつこさがかっこいい。劇中の映画監督があっさり死ぬことと監督が存在しなくても反復される映像の意味を深く考えることは可能だろう。ここでのジム・キャリーとファレリー兄弟の不在にも何か意味があるのかもしれない。どうでもいいネタでうっかり泣かされかけたが実はエンドロールが一番泣けたりすることと、下ネタ大爆発なのに「戦争映画」において女優が一切出てこないことへの考察も出来るかもしれない。トビー・マグワイアもニック・ノルティも立派だった。など、この映画全体に通底するいわゆる「アメリカ映画」のパロディは、「アメリカ映画」をほんの少しでも意識的に見ていないと理解できない程度のものなので、いわゆる「一般的」な観客には何が面白いのかよくわからないかもしれない。でもそんな映画にこれだけのお金と規模をかけた「アメリカ映画」の器のでかさに改めて心打たれた。
がしかし、とにかく、生まれて初めて心の底からトム・クルーズを尊敬できたということが一番の大事件なのだ(この宣伝の仕方はもんのすごく立派だとは思うもののやっぱりちょっともったいないかも。どうしようもない理由があったのかな)。なんとしてでもあのダンスはマスターしなければ。この役にトムを起用したベンは次回作が心配になるほど偉大だ。
観賞後興奮し過ぎて数年ぶりにパンフレットなんて買ってしまった。これまたサービス精神旺盛の素晴らしい出来。トロピック万歳。 見てね。