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10.27

シブ筋

なんとなくお久しぶりなシネマヴェーラさんに行ってみたら、一階はせっせと工事中であった。
実はほとんど未見の川島雄三「シブ筋」十八選」特集にて『洲崎パラダイス 赤信号』(56年)を鑑賞してみたのですが、これ、周りの人がみんな声を揃えて「面白い!」と言うのでもっとコメディな雰囲気を勝手に想像していたのですね。そしたら戦後の遊郭地帯を巡る哀しい女とヒモ男のえらい切ない物語で勝手にびっくりしてしまいました。確かにすごい面白かったんですけど。あの遊郭の入り口にあるでっかい「パラダイス」の看板だけで十分ってくらいびっくりしてしまった。
新珠美千代演じる身勝手だけど幸せになれない女と仕事もしないくせに嫉妬に狂う青年の三橋達也の関係も切なかったけど、何かとふたりの世話をする飲み屋の女将がえらい泣けた。若い女と逃げた挙げ句勝手に戻ってきた夫を見た瞬間の顔がもう。
で劇場に行ってから作品差し替えと知りたまたま見た『花影』(61年)がこれまた既にホステスと呼ばれる時代に「最後の女中」と言われるもう若くない飲み屋の女の切な過ぎる物語で、男に馬鹿にされることで傷ついた心をまた馬鹿な男で埋めていく姿が我ながらどうかと思うくらい既視感…。あの美術家の先生までもが。銀座で働いたことなんてないのに。うおーなんちゅー映画やーとひとり身悶えながら見て、ラストのブルー過ぎる救いのなさには思わず笑ってしまいましたとさ。男たちのために死んだりしないけどさあ、池部良の微妙な上目遣いがもう。