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4.12

『イリュージョニスト』

私が嫌悪するのは品の悪いけばけばしさと未熟にも程があるロリコンに支配された日本のアニメである、という明確な差別意識を持っているので洋モノのためなら苦手な大江戸線に乗ってでもと六本木に向かいシルヴァン・ショメ監督『イリュージョニスト』 を見に行った。監督の前作『ヴェルビル・ランデブー』も大好きだし今回は原作がジャック・タチの遺稿となれば見ないわけには。そのジャック・タチとこの映画を巡る後日談には色々生臭い話もあるみたいだけど…。
冴えないマジックしか出来ない老手品師がもう都会では仕事がないため言葉も通じない田舎の島へ営業に向かいそこで出会った貧しい少女が彼のことを本当の魔術師だと信じ込んで老人の放浪に勝手についてくることからふたりの生活が突然始まるという物語が、ふたりの言語が違う(最後まで少女の話す言葉がどこの言語かわからなかったんだけど…。スコットランド??)が故にほぼ無声映画状態で進むのだけれど、その静かな世界はものすごくゆったりと時間の流れ、無条件に老人が少女の幸せのためにだけ行動する姿(彼女の夢を叶えるためにこっそり深夜バイトしたりするのよ)が、もう私みたいな我欲まみれの人間が存在してごめんなさいと謝りたくなる神聖さ。旅芸人が集まる宿には貧乏なフリークスしかいないんだけど、ノイズだらけのレコードと温かいシチューが彼らを救う、魔法の世界。最終的には女はカネがかかる生き物だという教訓を哀しい程教えてくれるし。
劇中に映画館が出てくるんだけど、そこに飾られてるポスターが『ぼくの伯父さん』なのはご愛嬌、と思ったら、そのスクリーンに映るのがまさかのジャックなのには思わずわあっと小さな叫び声をあげてしまった。こういうセンスには敵わない。
と、私がぎゃーぎゃーとあーだこーだ言うよりも、HPに掲載された高田純次氏の一行コメントを読んだ方がこの映画の偉大さが切実に伝わると思う。是非ご一読を。