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8.23

『症例X』

最近身の回りでめでたいニュースが多くって、先日も祝い酒じゃと浮かれて酔っ払ってたらつるっと滑ってがつんと尻もち、はよくあることだしその時は特に問題なかったのだけれど、翌日尾てい骨の激痛で目が覚め、そのまま起き上がるのに数分を要する事態に。その後何をするにもお尻が痛いくて日常の動作が超ゆっくり、今なら素で『スローな刑事にしてくれ』に出れるねと思いながらここ数日ひたすら安静にしてたと言うかするしかない日々を過ごしておりました。が、本日やっと外出できるくらいには復活したので(なので多分骨折はしてないだろうと病院にはダルいから行かない)吉田光希監督『症例X』(07年)の試写を拝見することができたのでした(今話題のロカルノ映画祭に実は08年に参加していた自主映画、失礼ながら今回初めて知りました)。どんな内容かもほとんど知らずに見たのですが、80年生まれの監督さんとは思えぬ落ち着いた画面とでも堂々とした大胆さで、へえなるほどと面白かった。お名前から勝手に女性を想像してた監督さんは好青年だった。
年期を感じる一軒家に住む認知症を発症しつつあるヘビースモーカーの年老いた母と肉体労働をしながら生活費を稼ぐもう若くはない息子のふたり暮らしの様子が、ほぼその家の中だけを舞台に台詞らしい台詞もなく進んでいくのだけれど、確かにドキュメンタリーかと勘違いする程自然な役者の芝居にまず驚き、このまま地味な鬱屈日常系映画に落ち着くのかと思いきや微妙に変化していくふたりの関係が、執拗に響く踏切の音にギリギリ押し止められてるような危なさが怖くて切ない。多分これはそれこそXとしか名付けようがないくらい今の日本のどこにでもある親子関係なんだろうなと思いながらも、最後のふたりの姿がきちんと映画でかっこいい。ヴァンダかってくらい点かないライターを触り続ける老婆とその音に気付く息子の話。
撮影や音の感じも非常に立派、監督自身が担当してるらしい照明の暗さがすごい。67分、10月8日から二週間ユーロスペースさんにて特別レイトショー上映だそうな。是非とも一度見てみることをお勧めします。