『パレルモ・シューティング』
なんてね。実はもうだいぶ前に爆音上映で見たはずのヴィム・ヴェンダース監督『パレルモ・シューティング』 の感想をうっかり書き忘れてたので今更。
映画の冒頭、部下に対して偉そうに無茶な命令をしたりクラブでちゃらちゃら女をナンパしたり黒ブリーフいっちょうの姿でうろうろと歩き回るちょいワル風売れっ子カメラマンの主人公(カンビーノ)の姿がだいぶ不愉快で、先の展開が不安でしょうがなかったのですが、そんな彼があるきっかけでパレルモ=はじまりの港を訪れて、街を散歩したり、絵画の修復をしてるヒロイン(ジョアンナ・メッゾジョルノ)と出会いながらゆっくり変化していくにつれ、段々と私の心も落ち着きを取り戻し、引き込まれていったのでした。
わたしゃヴェンダースが1994年に出した写真集「かつて…」が好きでねえ、そこに書かれていた、被写体に向けてシャッターを切るという行為はショットガンを撃つのと同じでその反動がすべて自分に跳ね返ってくるものなのだ、とかなんとか言ってた文章(うろ覚え)を時折思い出したりするのですが、その影響もあってか、カメラを構えた主人公と主人公を執拗に付けねらう弓矢を構えた死神(末期癌全開のデニス・ホッパー)が対峙するシーンはまるで西部劇みたいだなと思ったりした。ラストに主人公と死神の間で交わされる「お前はおれで、おれはお前自身なのだ」とかなんとか言ってた台詞(うろ覚え)もどこか写真集の文章と共通するところがあり、昔ほどの人気はなくなってしまったかも知れないヴェンダースさんだけど良い意味でずっと同じなんだなあとちょっと感動させられました。私が見たのは吉祥寺だけど新宿Ksシネマさんでは10月14日まで公開されてるようなので、まだまだ是非。この作品に関するDOOM!くんたちによる樋口泰人氏インタビューも合わせて読まれるとよろしいかと。