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3.01

『ニーチェの馬』

こっそり告白すると実は何がいいのかあんまりわからない監督だったりするんであんまり見る気はなかったのですが西島秀俊さんが「僕に騙されたと思って」とまで言うもんだから(雑誌のインタビューで)しょうがないなあとタル・ベーラ監督『ニーチェの馬』を今更。
ニーチェには、1889年馬車馬に駆け寄り卒倒、そのまま精神が崩壊し二度と正気に戻ることはなかった、という逸話があるらしく、映画の主役はその馬の馬主と娘で別にニーチェが出てきたり絡んだりするわけではございません。ちょっと笑えるくらい凄まじい豪風が吹き荒れる果て切った土地にぽつんと存在する小さなボロ屋で単調極まりなく、しかしじわじわと崩壊していく生活を繰り返す老人と若い女とやる気のない馬の6日間が、モノクロフィルムに最低限の会話で描かれる154分。期待を裏切らない長回しに次ぐ長回し、もはや生きているの死んでいるのかわからない人間と馬たちの美しいこと、地味ーな世界なのにさほど長さを感じさせない、じゅーぶんに凄い映画だとはわかる。それなのに今イチ乗り切れないのは本当に個人的な好みとか感覚の問題だと思うので、しゃーない。西島さんごめん。なんか、凄いことやってる感が強過ぎて感動する前に疲れると言うか。
ただ、草や水を目の前にしても無反応な馬の芝居はどんなからくりになってるのか気になった。あと、あんな風の強い場所で開けた扉は閉めた方がいいと思った(風でばん!って閉まるドアの音って怖くない?)。