『裏切りのサーカス』
こんなに雹やら雷やらが落ちまくる日に映画見にいく物好きもおらんやろと余裕かまして開演時間ぎりぎりに行ってみたら結構な混雑でちょっとびっくりだったトーマス・アルフレッドソン監督『裏切りのサーカス』ですが、そんなヒットも納得の面白さではございました。監督の前作『ぼくのエリ』にはそこまで興奮しなかったけど、次回作でこんなに化けるとは。
原作はどうやら今更説明不要な程有名なスパイ小説らしく(さいとうたかを先生がコメントするくらいですから)、しかしそんな事情をまったく知らない私にとっては、冷戦時代の英国諜報部にソ連のスパイが紛れ込んでいるという事実を暴くためにハンガリーだのアメリカだのを巻き込んでの心理戦って時点で複雑過ぎてストーリーを追う気力は失せるし、主要な登場人物たちがみんな鼻デカ系北欧顔で今イチ見分けはつかないし、ぞろぞろ出てくる重要らしいキャラクターのそれぞれの名前に特徴があるわけでもなく覚え切れないし、しまいにはヤツらがみんなゲイかノンケかもようわからんくなってくるし、とてもじゃないけどよくできた(らしい)物語を満喫できたとは言えないんだけれど、アメリカ映画のようなアクションがあるわけでもなく、イギリス映画のような重い真面目さがあるわけでもないのに、常にドキドキさせられた、不思議な映画だった。アメリカ映画派の方たちには不満が残るってのはなんとなくわからなくはないけど、私はこれはこれでかなり好き。ひたすらに右から左へ左から右へ進んでいくお話や時間や画面に乗せて静かに進んでいく映画が、ラストの愛の銃撃で落ち着く瞬間にはちょっと泣きそうにすらなってしまいました。
久しぶりにまともな姿を見た気がするゲイリー・オールドマン、ただ話を聞くか泳いでるかだけで大したことはしてなかったけど、いい感じの初老のおじさまになってて、萌え。20年ぶりくらいに『シド・アンド・ナンシー』でも見直そうかしら。
とベタ褒めしつつも、やっぱりさすがにこの内容の不理解さはヤバいとも薄々感じていて、機会があればもう一度見直したい…。