5.12
『わが母の記』
小津安二郎へのオマージュだとか言うから、わざわざ混雑する土曜のシネコンに見に行ったと言うのに原田眞人監督『わが母の記』 、全然違うし。まさかとは思うけどちょっと本気で日本家屋に口うるさい小姑と年寄りと中年男性を揃えて泣かせれば小津映画に近づくとか思ってんじゃないかなんて(もちろん本気で何かを期待してたわけではないが…)。
昭和3、40年代を舞台に、幼い頃母に見捨てられたと思い込み心の中では憎みながらも老いてボケていく母親を気にかける主人公の、井上靖の自伝的小説らしい原作の内容に色々言いたいことはあるものの今更ケチをつける気はなく(にしても彼の娘である三人姉妹は馬鹿過ぎないか)、役所広司と樹木希林の芝居のやりとりは素直にすごいなと思ったりしたけれど、本当に意味不明に、眞人はカットを割り、遊人がダサくつなぐ、見ながら何回もずっこけそうになってしまった。田舎のロケーションは美しいし落ち着いた芦澤明子さんのカメラも素敵だったのに、なんなんだろうこのペラペラ感。古き良き時代が映ってるのにスピッツ流れてたよ。昭和の文豪ってこんなにお金持ち生活をしていたのかという驚きはあった。25は越えてるだろう宮﨑あおいのセーラー服姿の違和感のなさがホラーだった。
そんなことより、本日の超朗報、漫画家の主人公と認知症の母を描いた世界をあの森崎東監督が次回作として撮られるそうで、内容は似てるけどどれだけ違う(素晴らしい)映画になるのか、想像しただけでもにやにやが止まらない。無事完成を祈るのみ。