『きっと ここが帰る場所』
チラシの、ものすごく完成度の低いオカマみたいなショーン・ペンを見たときにはやや不安だったポアロ・ソレンティーノ監督『きっとここが帰る場所』 、アイルランドを拠点にニューヨークやアリゾナなどアメリカ中を旅する映画をイタリア人監督が撮ったというのが妙に納得できる、ロードムービーかと思ったら音楽映画かと思ったらサスペンスなような、なんか変わった映画だった。
ストーリーはもちろん家族や故郷を巡る真摯で感動的なものだし、デイヴィット・バーンやウィル・オールダムによる音楽もかっこいいし、フィルムで撮られた色んな街の風景も美しかったんだけど、正気なんだかボケてるんだかわからない元人気ミュージシャンのおっさんが絶縁状態だった父親の死をきっかけに本当に大人になっていく姿を、なにもナチスの残党を引っぱり出してまで語ることかと、全体的にやたらと動き回るクレーンのカメラも気になって、ちょっと無駄に大袈裟過ぎないかと感じてしまった。ラストのタバコとノーメイクは分かりやす過ぎてちょっと興ざめ。旅先で出会った母子との弾き語りとか妻との何気ないやりとりがすごく良かったから、もっとシンプルな映画にすればよかったのにと。銃声のように響くデジカメのフラッシュ音で主人公が何を撮りたかったのか、死にかけのじいさんを真っ裸にして苛めたかっただけなのか、よくわかりませんでした。
がしかしこれは多分、主人公のモデルになってるらしいロバート・スミスというミュージシャンや、7、80年代の音楽に相当無知な私が見てしまっているからで、もっとその辺(失礼)に強い思いがある人が見ると大いに感動できるのかもしれないです。相変わらずフランシス・マクドーマンドは警察やら消防士やらの制服が似合って素敵だった(結局あの燃えた車はどうしたんだ…?)。