『へルタースケルター』
岡崎京子さんという漫画家に特に思い入れはないのですが、やたらと思い入れてる女子に苦手なタイプが多いもんで、この人が映画化すると聞いたときにはだいぶ不安だった蜷川実花監督『へルタースケルター』 ですが、これが思いのほか良かった。と言うか、前作『さくらん』のような中途半端に映画を目指す無駄な色気がなくなって、ほんとーに見世物に徹してる感じが、↓の三本なんかより全然好感度大。ほぼ原作通りの脚本も、そこから一歩も抜け出せてないと言う不満もわからなくはないが、試したところで無理だろうからこれくらいが妥当かと。
今更蜷川実花の芸術的センスや色彩感覚に愚痴を言っても仕方がないのでその辺のことはとりあえず置いといても、もうここまで沢尻エリカという女優を撮ることに気合いを入れて、それに応えたエリカ様の凄まじい演技に普通に圧倒されて、ここまでやったならちょっとくらいワガママ言っても許してあげてよと思いました。素晴らしかったです。エリカ様以外にも配役は今これを映画化するならこれしかないという完璧さじゃないでしょうか、大森南朋演じる検事だけが残念過ぎました(終映後の女子トイレでギャルが思いっきり「あのポエマーうざいんだけどー!」と叫んでて、爆笑した)。寺島しのぶの白痴キャラも微妙、クラシック音楽の使い方がダサ過ぎるとか渋谷の描き方や主題歌の浜崎あゆみに漂う90年代感がどこまで狙ってるのかわからないとか気になることも勿論たくさんあったけれど。この度、窪塚洋介は日本一立ちバックが似合う男に認定。
見ながら、そうかこの漫画が衝撃的だったのは女が女を消費することについて描いたからで、オマージュを捧げてる楳図かずお「洗礼」における女性の美醜問題からより先に進んでるけどやっぱりその元は男が作ってるわけでと『オープニングナイト』まで思い出したり、真面目なことまで考えてしまいました。
なんて、そんことより、映画そのものよりこの映画を公開初日に見に行った岡本夏生さまがそのまま5回連続見続けたという事実の方が私の胸にこたえた。バブルの頃にはおエラいさんとのおショックス(食事+セックス)が当たり前だったと言い放つ40過ぎの女性が今これを見て何を思ったのか、想像しただけで泣ける。