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10.04

『ライク・サムワン・イン・ラブ』

東京での映画生活リハビリ第一作にアッバス・キアロスタミ監督『ライク・サムワン・イン・ラブ』 なんて選んだ私がバカだったのか。撮影中から気になりまくってたけど具体的にはどんな内容かまったく知らずに見てみたら、何これ。観賞後のダメージ半端ないんですけど。ラストを迎えてエンドクレジットが出てきた瞬間、あまりのことに思わず素で声を上げて笑ってしまった。場内は超どんよりしてたけど。
東京や横浜を舞台に、普通に日本で生活してる日本人たちのドラマを、キアロスタミが撮っただけで完全にキアロスタミ映画にしか見えず、見知ったはずの場所を三人の男女が喋ってるか運転してるかだけなのになんでこんな凄い映画が作れるんだろうと素直に心の底から感心し、めちゃくちゃ丁寧な演出や音響にうっとり感動もしたけれど、でも。監督の初期作品の愛らしさはなんだったんだってくらい、恐ろしい映画でございました。どうしてわざわざ異国の地でこの作品を撮ろうと思ったのか、イラン人怖い、駐車場を監視してるババアぐらい怖い。
前作『トスカーナの贋作』にも似たような、そこで進んでいくドラマが嘘かほんとかわからなくなっていく感覚が、更に主演のおじいちゃんの、ヒロインの女子大生に対する恋だか愛だかの曖昧な切なさに重なるラブロマンスも、さすがのDV俳優加瀬亮の登場によってじわじわと不穏な方向に。この加瀬亮のちょっとした表情や喋り方があまりにも上手で、これも思わず笑ってしまうくらい本気で怖かったんだけど、でも。やっぱ84歳にもなって若い女相手にエロいこと考えたらバチが当たるんだなあと、せめて学習したことにしておく。新人だという高梨臨さんという女優さんもとても良かったと思います。