『新しい靴を買わなくちゃ』
ひとり勝手に岩井俊二ブームに乗って、岩井監督プロデュース&撮影、北川悦吏子監督『新しい靴を買わなくちゃ』 を見てみたら、こ、これは…!久しぶりに「絶句」という言葉しか思い浮かばない、もの凄い映画だった。モテない少女がブス風邪こじらしたまんま大人になった結果、ホラー。四十過ぎたカマトト女(主演のふたりはキスすらしない)のレディースコミック、とでも言うか。ある意味どんなポルノ映画よりもえげつない(出会って間もないとき、女が突然男に向かって「あなたは、ネコなの?」と尋ねるシーン、まさかいきなり性癖の話かよとちょっとテンション上がったものの、ただの不思議ちゃんな会話だった…)。
四十女の密かな夢(ほんとは私もパリで暮らして偶然出会った年下のイケメンオシャレクリエーター男子に「意外と可愛いとこあるんですね」って慰められたい的な…)を一身に背負ってる中山ミポリンの芝居や台詞がとにかくイタ過ぎて正視できなくて(前から思ってたけど、この年代の女性ってかなり本気でファンシー好きですよね。なんでやろ)、 藤井樹が汚れてしまった。岩井俊二の賞味期限はまだまだ有りでも、本当に「ロングバケーション」で時間が止まってる北川先生は完全に発酵されておられました。だって、本気で、パリの街!キラキラ光るセーヌ川(キラキラし過ぎでハレーション起こしまくって画面真っ白なってましたけど)!カフェで流れるフレンチポップ!オシャレなアパルトマン!をイケてると思ってんだよ、やばくないか。いやー、すごかった。久しぶりに映画中めっちゃ時計見た。こんな映画作るために人のカネでパリ行けるなら私も映画監督なりたい。
なので、完全に醒め切ってるくせに女の暴走する妄想に付き合ってなんとか最後まで王子を演じ切った向井理と綾野剛はほんとに立派だと思いました。お疲れさまでした。坂本龍一のやっつけ仕事感は半端なかったけど。
てか、いい歳してシンデレラ夢見て男にガラスの靴もらって喜んでんじゃねーよキャリーみたいに自分で買えよ。
と荒んでしまった心に癒しを求めて、夜はユーロスペースさんでレイトショー公開中の杉田協士監督『ひとつの歌』に駆け込んでみたら、予想以上の客入りで何より。同じ男性カメラマンが主人公でも、わたしゃ無口な人の方がいいよ。