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11.12

『終の信託』

近所の映画館では既に上映回数が減っていたので久しぶりに街に出て周防正行監督『終の信託』を。
予告やチラシからある程度想像はしてたものの、それでも、映画が始まって30分、一時間経っても、ちょっと不安になるくらいひたすら画面的にも物語的にも、暗い、地味。尊厳死という重過ぎるテーマと、がっつり恋愛感情で繋がるわけでもない医者の女と死期の近い患者の男の繊細な関係を、がつがつ切り返すわけでもなく、とにかくふたりが静かーに会話することを見守っているだけで淡々と進んでいく映画が、まったく退屈ではなくその丁寧さによりむしろスリリングで、やっと冒頭の現代に戻る終盤の検事室での、これまたただ医者と検事が会話してるだけの迫力には圧倒されまくってしまい、これはちょっと凄い映画なんじゃないかと。何が凄いのか今イチ上手く言葉にできないけど、じわじわと超感動しました。草刈民代の髪の長短と車の趣味でしか時間経過がわからないとか衝撃的なくらいすっきりしない終わり方とか、世界の亀山モデルとは思えぬ不親切さにもびっくりした。医療ドラマであると同時に、本妻になれなかった女の哀しい物語でもある。
基本的に出っぱなしの草刈民代が、文字通り身体を張って素晴らしかったです(しかし思いっきり下世話なことだけど、妻の濡れ場を監督する旦那の心情ってどんなんなんでしょうね…)。ステロイドマスターの私としてはつい役所広司に「さっさと飲めばさっさと楽になるのに!」とどうでもいい助言をしたくなってしまいましたが。
今作により、出演作が全部トンデモの法則をめでたく脱した大沢たかお、でもこれ、浅野たーくんと役柄交換してもよかったかもとちょっと思った。